プロフェッショナルサービス
株式会社enechain
<導入サービス>
プロフェッショナルサービス
株式会社enechainは、エネルギー・マーケットプレイスを運営するスタートアップ企業です。エネルギー業界の変革を牽引する同社では、取り扱い製品数の増加に伴い、開発チーム間でインシデント対応の質にばらつきが生じていることが課題となっていました。そこで同社は、SIGQのインシデント対応支援サービスを導入しました。全チームへのイネーブリング(自律支援)を通じて、インシデント対応力の底上げと、製品監視文化の定着による信頼性の強化に成功しました。
■導入前の課題
製品数が増加する一方で、開発チームごとにインシデント対応の質にばらつきが生じていた
障害対応に対する意識やノウハウが個人に依存しており、組織として標準化されていなかった
ビジネスをさらに成長させるためには、セキュリティやインシデント対応といった製品の信頼性を高める必要があった
■導入効果
製品を監視する文化が組織全体に定着し、信頼性の継続的な改善の基盤を構築した
開発チーム全体への支援を通じて、インシデント対応能力が全社的に安心できる水準まで向上した
セキュリティ水準の向上にも知見を提供し、信頼性を強みとした事業展開に貢献する
製品の急成長に伴い、インシデント対応の品質にばらつきが生じている
株式会社enechainは、「Building Energy Markets, Coloring Our Society」をミッションに掲げ、2019年に設立されたスタートアップ企業です。国内最大級のエネルギーマーケットプレイスの運営者として、「eSquare Live」や「eCompass」など複数の製品を展開し、エネルギー業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。
同社のCTOである須藤優介氏は、enechainの事業の特徴について次のように語っています。

「当社の事業の魅力は、スタートアップでありながら、電力という社会インフラを担うシステムを構築するという挑戦に取り組んでいる点にあります。電力取引の世界では、2016年の電力自由化を契機に、日々さまざまな制度変更の提案がなされています。しかし、そうした要望に迅速に対応できるシステム開発体制を整えている企業は多くありません。だからこそ、スタートアップならではのスピード感や、新しい技術を活用した開発スタイルを強みとして発揮することができるのです」
enechainでは、Google Kubernetes Engine(GKE)を中心に、Google Cloudを基盤とした技術スタックを構築しています。社会インフラを担うシステムには、セキュリティやサービスレベルなど、高い信頼性が求められます。そこで、ビジネスの成長に対応できるスケーラビリティを備え、チーム横断的な管理が可能なGKEを採用し、統一的なガバナンスとプラットフォームエンジニアリングを実践しています。
事業の成長に伴い、複数の製品を展開していく中で課題となったのは、開発チーム間でインシデント対応の質にばらつきが生じていることでした。具体的には、製品ごとに障害の検知方法やインシデントへの対応速度がまちまちだったことに不安を感じたと、須藤氏は振り返ります。
「社会インフラを担う製品には、高い信頼性が求められます。すべての製品にわたり、インシデント対応能力の底上げが必要だと考えました」(須藤氏)
この課題の背景には、いくつかの要因があります。初期の製品開発段階では、新機能の開発が優先され、信頼性向上のための取り組みは後回しになりがちです。また、インシデント対応に対する意識やノウハウが個人に依存しており、エンジニア個人の経験に左右されがちだったことも理由の一つでした。こうした状況を解消するために必要となるのが、SRE(Site Reliability Engineering)、すなわちソフトウェアエンジニアリングに基づいた運用設計と、継続的な計測・自動化・改善を通じてサービスの信頼性を向上させるための手法・役割です。
しかし、須藤氏は、SREを実践することの難しさも指摘しています。SREには、一定以上の規模を持つプロダクトの運用経験や、アプリケーションとインフラの両方に関する知見が不可欠です。また、教科書的なSREの知識をそのまま適用しようとしてもうまくいかず、組織やビジネス、プロダクトの現在のフェーズに合わせて柔軟に対応することが求められます。須藤氏によると、このような高度なスキルを持つ人材はかなり限られているとのことです。
決め手は「やり抜く」姿勢 全チームを巻き込んだSREの自律運営支援
これらの課題の解決を目指し、2025年5月にenechainが導入したのが、SIGQのインシデント対応支援サービスです。導入の決め手となったのは、スタートアップや大規模WebサービスにおけるSREの知見に加え、サービス内容と提供価値の明確さにあると、須藤氏は述べています。
「過去の経験から、SRE業務を外部に委託する際、期待値が曖昧なまま人員を増やしても、実現したい成果が得られないという反省もありました。その点、SIGQは現状の改善点を分析し、期間内に『やり切る』べき内容を明確にしたロードマップを事前に提示してくれました。成果に対する期待値の調整がしやすかった上、技術力とマネジメント力を兼ね備えた人材は非常に少ないため、その点に大きな期待を寄せました」(須藤氏)
SIGQによる支援内容は以下の通りです。まず、現状分析と改善ロードマップに基づき、OKRおよび定期的な報告体制を構築しました。その上で、SIGQのメンバーがSREとして各開発チームに参加し、各チームが自律的に運用できる状態になるまで支援を行いました。具体的な取り組みとしては、Datadogを活用したモニタリング基盤の構築・改善、アラート設定の最適化を含む運用・監視体制の整備、インシデント対応フローの策定と全社への浸透などが挙げられます。さらに、SIGQ自身がSOC2 Type1保証報告書を取得した際の経験を活かし、内部統制やセキュリティに関する知見の提供も行いました。
特に重点的に取り組んだのは、インシデント対応能力の向上とイネーブリングでした。全開発チームを対象に週1回のミーティングを実施し、メンバーと同じ目線で目標達成に向けた働きかけを行ったこと。そして、ステークホルダーの承認も得ながら、ルール・ポリシーやドキュメントを整備し、チームに定着させていったこと。これらのSIGQによる取り組みについて、須藤氏は、「当社側の管理工数を削減しつつ、変革のための一連の取り組みを漏れなく実施していただいた」と高く評価しています。
「私自身、一部の製品開発のリーダーも務めていたため、支援する立場にもありました。信頼性に関する指標が明確になったことで、インシデントの兆候を漏れなくチェックできるようになり、チームが自走していく様子を身をもって体験しました」(須藤氏)
プロダクト監視文化の定着 成長に向けた信頼性強化の布石
SIGQの支援によって得られた具体的な成果の一つが、アラート数の大幅な削減です。IaCでインフラを構築する場合、同じ設定内容が複数の環境にそのまま反映されます。そのため、アラート設定に誤りがあると、その影響が全体に及び、大量のノイズが発生する原因となってしまいます。特にアラート設定は、一度構築されると放置されがちです。そこで、上流の設定を見直した結果、アラート件数を10分の1に削減することに成功しました。ノイズが減少したことで、真に対応が必要なアラートに集中できるようになり、インシデント対応の質が大幅に向上しました。
SIGQの支援によって得られた最大の成果は、定量的な改善以上に「プロダクトを監視する文化が組織に定着したこと」だと、須藤氏は強調します。かつてはチームごとにばらつきがあったインシデント対応への意識が統一され、組織全体として「エラーが発生したら即座に対応し、修復する」という高い水準での対応が定着しました。特定のチームでの緩みを放置せず、全社で一貫した基準を維持することで、プロダクトを常に監視し、その信頼性に責任を持つ習慣が確立されたのです。
「BtoBビジネスでは、BtoCに比べてアクセス数が少ないこともあり、些細なエラーを軽視してしまいがちです。しかし、今後ビジネスを拡大していくためには、製品の信頼性を決して疎かにすることはできません。将来の成長を見据えると、このタイミングで信頼性を重視する組織文化を強化できたことは、大きなメリットです」(須藤氏)
信頼性を強みとして、社会インフラとしてさらなる飛躍を目指す
須藤氏は、同社の今後の展望について、eSquare Liveなどの新製品の利用を促進しつつ、複数の製品を統合し、顧客にとってシームレスかつ最適なソリューションを提供していきたいと語りました。さらに、社会インフラを支える製品として、より高いセキュリティや可用性の要件への対応が求められているとも付け加えました。そこで同社は、今後、国際機関による第三者認証の取得など、信頼性をさらに高めるための取り組みも検討しています。
「ランサムウェアなどによる被害が深刻化する中、お客様はセキュリティ対策にこれまで以上に強い関心を寄せています。セキュリティへの投資は、防御の側面だけでなく、お客様に安心して利用していただき、自社製品の価値を高めるための攻めの武器としても重要です。SIGQが持つ高度なセキュリティに関する知見に期待しています」(須藤氏)
最後に、須藤氏は、同様の課題を抱える企業に対し、次のようにアドバイスを送っています。
「SREは難易度の高い業務であり、各企業ごとに最適な解決策を導き出すには、一定の経験と実行力が必要です。時には、自分たちだけで試行錯誤するよりも、SIGQのような実行力を備えたソリューションを導入することが、結果的には最も早くSREの実現と、チームの自律的な運営につながります」(須藤氏)
エネルギー業界の変革を目指すenechain。SIGQは今後も、信頼性向上のための取り組みを通じて、同社の挑戦を支援していきます。